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よろづ図書倉庫『向日葵』

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短編小説


【ポケモン】涙の雫は何色に染まるか~begening~【BW】


「笑人、早く!」
 
「お待ちください、お嬢様! もう少しで……あぁ、ほら。できました!」
 
 
 鏡の前に、少女が座る。その後ろでは少年が、少女の髪を結っていた。
 髪を結われ終わった少女が立ち上がる。
 
 
「ありがとう、笑人。これで普通の一般人に見えるかしら?」
 
「ええ、見えますよ。ティアお嬢様」
 
「あっ、ティアって呼ばない! わたくし……あたいは、もうドロップよ」
 
 
 少女が言う。少年はそれを聞いて後ずさりして、あわてて深く頭を下げた。
 
 
「申し訳ありません!」
 
「あと、お父様にはティアがいないってことがばれないようにしてください。バレたら大問題、クビも考えさせていただきます」
 
「滅相な!! だいじょうぶですっ、なんとしてでも秘密は死守いたします!」
 
「よろしくお願いしますわ。……それじゃあ、行ってきます」
 
 
 少女はバッグを持って部屋の扉を開ける。
 
 
 少女、ティア・ウェンデューはポケモントレーナーのドロップとして旅に出ることになる。
 世界をこの目で見るために。飽き飽きしていた日常から抜け出すために。
 
 
 
 
 
 
  涙のしずくは何色に染まるか
      begening
 


 

 
「それじゃあ、これがポケモン図鑑ね。
にしても、驚いたわ……あなたのご両親は反対されていたのに」
 
「でも、ポケモントレーナーになりたいってずっと考えてたんです。
アララギ博士からの提案、嬉しく思っております。ポケモンまでいただいて……」
 
 
 ティア=ドロップはアララギ博士からポケモン図鑑を受け取る。
 彼女の足元には、ポカプが座り込んでいた。たった今、アララギ博士から受け取ったポケモンだ。
 
 
「わたくし、必ずポケモン図鑑を完成させますわ。
……ですから、私がドロップだということは、お父様とお母様には黙っておいてくださいな」
 
「わかったわ」
 
 
 くすり、とアララギ博士が微笑む。ティアは足元にいたポカプを抱きかかえた。
 
 
「ねぇ、アララギ博士。このポカプに、名前をつけてもいいですか?」
 
「ええ、かまわないわ。そのポカプはもうあなたの友人なのだから」
 
「じゃあ、翡翠。わたくし、翡翠の石が好きだから……同じくらい、この子も大好き」
 
 
 つぶやくティア。
 それを聞いたのか、ポカプがティアに頬ずりをした。ティアは、ポカプを優しくなでる。
 
 
「確か、このカノコタウンの北にカラクサタウンがありましたよね。
そこに行ってみようと思っています」
 
「そうね。その先のサンヨウシティで、ジムに挑んでみるのもいいかもしれないわ」
 
「はい。……じゃあ、翡翠! 早速行こうか!」
 
 
 ティアは明るい口調で言う。明るい口調のときのティアは、「ドロップ」として行動しているティアだ。
 ドロップはポカプをボールに戻し、研究所を出た。
 
 家にこもって、ただ家庭教師の話を聞き流していただけのティアにとって外の世界は新鮮だった。
 ずっとこうして、普通のポケモントレーナーとして旅することを夢見ていた。
 ……だが、厳格な両親はそれを許さなかった。だから、ティアはドロップとして旅に出ることを決めたのだ。
 ウェンデュー家の執事たちに、自分が家にいないことがばれないように協力してもらっている。
 
 ――もう、家のことは考えない。
 
 
「あたいは、ドロップ! 何より自由が大好きな女の子なんだから!!」
 
 
 ドロップはそう叫んで、駆けていった。
 
 
 
 
 カラクサタウンにつくころには、ドロップのベルトに装備されたモンスターボールが2つに増えていた。1番道路で、マメパトを仲間にしたのだ。
 ポカプも少しずつだが実戦経験をつんだ。「トレーナー」をやっている実感がある。
 
 
「翡翠、傷は治った?」
 
 
 ポケモンセンターから出ながら、ドロップは抱きかかえた翡翠にたずねる。
 翡翠は笑顔でひとつ鳴き声をあげた。
 ポケモンセンターで回復したおかげで、戦いでの傷も癒えたようだ。
 
 さぁ、サンヨウシティに行こう。
 そこにはジムがあるし、それとマコモ博士に会う用事がある。
 そう考え歩くドロップは、ぴたりと立ち止まった。いきなりのことに、目を丸くする翡翠。
 
 
「何だろ、あれ?」
 
 
 ドロップはつぶやく。
 彼女の視線の先には、人垣ができていた。ドロップはそれが気になって、その人垣のほうに歩いていく。
 なにやら、緑色の髪をした、マントの男が話していた。
 
 
「私はプラズマ団のゲーチス。今日皆さんにお話しするのはポケモン解放についてです」
 
 
 男が言う。「ポケモン解放」、という言葉が出たとたん、皆ざわつき始めた。
 ドロップも、聞き流して立ち去るつもりだったが足を止めてしまっていた。
 
 
「われわれポケモンは人間と共に暮らしてきました。お互いを求め必要としあうパートナー。そう思っている方が多いでしょう。
ですが、それは人間がそう思い込んでいるだけ……そう考えたことはありませんか?
人間が好き勝手命令している、そうではないと言い切れる人がどこにいるのでしょうか」
 
 
 ざわめきが広がる。
 ドロップは、今すぐその場を立ち去りたくなった。
 いきなり夢をぶち壊してほしくはない。自分はポケモンと旅がしてみたくて、ポケモンといっしょにいるのだ。
 ……ただ、ティアとしてその言葉は聞き捨てならないものでもあった。
 
 
「ポケモンは人間と異なり、未知の可能性を秘めた生き物。我々が学ぶべき物を多く持つ存在なのです。
そんなポケモンたちのため、われわれ人間はポケモンを解放すべきなのです。それでこそポケモンと人間は対等になれる……
皆さん、ポケモンと正しく付き合うためにどうすべきか考えてください」
 
 
 男は、それだけ言うと仲間らしきものたちを引き連れて去っていった。
 人垣もざわめきをのこしながら崩れ始める。
 
 ポケモンの解放? 対等? ……ドロップにはよくわからない言葉だらけだった。
 旅立ったばかりなのに、嫌な話を聞いてしまった……やっぱり聞くんじゃなかったとドロップは後悔する。
 中途半端に正しい気がするから、たちが悪い。
 
 
「ねぇ、キミのポケモン」
 
 
 いきなり、後ろから声がした。ドロップは驚いて振り向く。
 そこには、さっきの男と同じような緑色の髪をした青年が立っていた。
 自分よりは少し年上だろうか。帽子が影をつくっているが、整った顔立ちをしている。
 ……この青年は自分に話しかけてきたのだろうか?
 
 
「あたい?」
 
「キミのポケモン。今、話してたよね」
 
 
 ドロップは思わず首をかしげた。『話してた』?
 ポカプは何か小さく鳴いてはいたが……この早口な青年は、ポケモンと会話でもできるのだろうか?
 ティアは親の仕事の関係でポケモンと関係するいろんな人間を見たが、そんな種類の人間は見た事がない。
 
 
「話してた、って何のこと?」
 
「そうか、キミにも聞こえないんだね。かわいそうに……。あぁ、自己紹介をしたほうがいいかな、ボクの名前はN」
 
「N? 変わった名前……あっ、あたいはドロップ。ポケモン図鑑を完成させるために旅をしてるの」
 
「ポケモン図鑑ね……そのために幾多のポケモンをモンスターボールに閉じ込めるんだ?
トレーナーはいつも、それを疑問に思わない。ポケモンはそれで幸せなのかって」
 
 
 Nが微笑んでモンスターボールを取り出す。
 
 
「君のポケモンの声、もっと聞かせてもらおうかな」
 
「それは、つまりバトルをしようってこと? なら、いいわよ。翡翠、降りて」
 
 
 ドロップはしゃがみこみ、翡翠を地面に下ろした。翡翠はふるふると体を震わせた。
 Nもボールからチョロネコを出す。
 
 
「楽しくバトルしましょう! ではさっそく……翡翠、体当たり!」
 
 
 翡翠はドロップの声を聞き、チョロネコに向かっていく。
 チョロネコはそれを受けるが、すぐにつめで翡翠をひっかいた。
 
 
「翡翠っ!! 一度下がって……火の粉で大ダメージを狙って!」
 
 
 ドロップが声を上げる。
 翡翠が、それに応え火の粉を巻き上げた。チョロネコはそれをかわし続ける。
 しかし翡翠も火の粉を出し続け、わずかだがチョロネコにあたった。
 すかさずチョロネコが攻撃しようと翡翠に向かってくる。ドロップはそれを見て、翡翠にそれをかわすよう指示を出した。
 翡翠はタイミングよくチョロネコの攻撃をかわし、体当たりを食らわせた。
 チョロネコはそれのダメージで倒れてしまう。
 
 あ、勝った。あまりにも意外すぎて、ドロップは驚いていた。初めて他人と戦ったのだけれど。
 ふと、相手を見る。相手も驚いているらしい。
 
 
「……そんなことをいうポケモンがいるなんて」
 
「? えーっと、対戦ありがとうございました」
 
 
 ドロップはとりあえず、ぺこりと礼をした。
 Nはチョロネコをモンスターボールに戻し、キッとドロップを見る。
 
 
「……モンスターボールに閉じ込められている限り、ポケモンは完全な存在になれない。
ボクは、ポケモンというトモダチのため世界を変えなければならない……」
 
 
 Nはそれだけいうと立ち去っていった。
 
 
「あれは誰だろうねぇ、翡翠」
 
 
 ドロップは翡翠に話しかける。翡翠は首をかしげた。
 
 あの青年は、本当にポケモンと話せるんだろうか?
 世界を変えるとは、どういう意味だろうか?
 ドロップの中で、考えが渦巻く。
 
 
 少女の旅は、まだ始まったばかり。
 
 
 
 
 
 
 
 

 あとがき
 
 Nさんがただの通りすがりの変な人になりました。私の中での彼はそういう人。いや、でも今まで書いたキャラ(特に男性)の中ではかなりまともなほうかもしれない。だってうちの男性陣っつーたらヒロイン大好きだったりオタクだったりブラコンシスコンだったりまともなのが見当たらない。
 というわけである小説の外伝。イッシュ地方の物語です。別の意味で最強主人公ドロップ=ティア。彼女の旅路を、いろんなところを端折りながら書いていきます。多分途中までですが……。とりあえずゲームよりの予定。
 次回、幼馴染オリキャラ登場予定。


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