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よろづ図書倉庫『向日葵』

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外部作品外伝


双子と猫のPast story(前)


※この小説はpixiv企画ぴくゆるの自キャラメインのお話です。









「うわあいい食べっぷりー」
 
「っるせえ」
 
「アシールはおごられたときにしかこんなに食べないです。
普段は木の実とかちまちま食べてるのです」
 
「ルクス、余計な事言うな」
 
 
 ノクターンのとある酒場。
 俺はルクスを軽く小突いて、また肉にかぶりついた。他人の金で食う肉は旨い。
 ベルが俺たちを見てニコニコと微笑んでいる。
 
 
「まったく、アンタたちは本当昔から変わらないわね。
『あれ』から何年経ったと思ってるの?」
 
「あ? ……6、7年位か、ルクス?」
 
「むう……多分、それくらいですね」
 
 
 そうか、『あれ』からもうそんなになるのか。
 時間が経つのは早いもんである。
 
 ベルは、小さくため息をついた。
 頬杖をつき、こちらを見つめる。
 
 
「今こんな話出すのはあれだけど……二人とも、帰ってくる気はないの?」
 
「帰る? どこに」
 
 
 俺はフォークを軽く振る。勢いがつきすぎて、危うくルクスに当たりそうになった。
 ベルが不服そうな表情になる。変な反論される前に、軽く口封じしておこう。
 
 
「お前の親父さん、まだ俺たちのこと許してねえだろ?
俺たち、ひでえことしたもんな」
 
「あのことは、アタシは気にしてないわよ。
父さんは、まあ、あの人神経質だから。アタシが説得しようと思えば説得できるけど」
 
「で、でも、あねうえ……」
 
「もう、アンタたちも気にしすぎよ。
アタシ、あんなのもう忘れかかってるくらいよ?」
 
「……」
 
 
 相変わらず、俺たちとベルとじゃ考え方が違いすぎて、会話にならない。
 俺はコップを手に取り、ぐいと水を飲み干した。
 軽く食器を重ねて、立ち上がる。
 
 
「ルクス、俺先行ってそこら辺歩いてる」
 
「ふえ、どうしたんです!?」
 
「別に。ゆっくり食ってから来い」
 
 
 俺はそういって酒場を出て行く。
 外は、少し肌寒い。見上げると、月や星が街灯の向こうで輝いている。
 
 
 ……あの時も、こんな感じの空だったっけ。
 さっきあんな話を出されたせいで、少し思い出してしまった。
 俺たちの旅立ちの日のこと。そのきっかけになったあれこれ。
 
 
 あまり、いい思い出じゃないけれど。
 
 
 
 
 家をなくして、親戚の家をたらいまわしされて、そんな「生活」が何年か続いていた。
 どこに行っても、何か悪いことが起きた。その度に、俺たちのせいにされた。
 起きていなくても、何か不都合なことが起きたら、全部俺たちのせいにされた。
 
 おかげで、ただでさえふさぎ込んでた弟はもっと話さなくなった。
 俺も、あまり他人と話したくなくなった。何か言いがかりをつけられるから。
 
 あいつらは、俺たちに嫌なことを全部押し付けたいだけだ。
 ああ、なんて嫌な「生活」だろう。
 
 
 俺の心も、凍り付いていったような気がした。
 
 
 
 それで、何度目かの引越し。
 引越しというよりは、前の家を追い出された、というべきか。
 俺とルクスは、トレランシア家に引き取られた。俺たちの大分遠い親戚らしい。
 
 
 でも、どうせ前と同じなんだろうな。
 そう思うと、まだ心が冷める。
 俺たちには何も変えられない。
 
 そう思ってた。
 
 
 
 
 トレランシア家では、俺たちがどこかに移動するときはいつも近くにメイドがついて回っていた。
 俺たちが何かしでかさないように、見張りということだろう。
 ルクスは本当に何も言わなかったから何を考えてたか知らないが、俺はそれがひどく不愉快だった。
 ただ、子どもの文句なんて聞いてもらえないだろうとも思っていたが。
 
 
 ある日の夕食を終えて、自室まで帰ろうと俺とルクスは部屋を出た。
 当然、後ろからメイドがついてくる。
 ついてくるなよ、と言おうと思ったが、言うだけ無駄なので黙ってルクスの手を引いて歩いていく。
 
 
「あ、ちょっと待ってよ!」
 
 
 いきなり、後ろから声をかけられる。
 俺は無視してルクスの手を引いた……が、ぐいとひっぱり返された。
 
 俺は不機嫌になって、弟を叱ろうと振り向く。
 が、そこには弟の腕を引く少女の姿があった。
 頭に猫の耳が生えた、セリアンと人のハーフの少女……たしか、ここの一人娘、クラベルだったか。
 
 
「お、お嬢様」
 
「あ、ごめん。ちょっとこの子達に用があるの。あなたは戻っていいわよ」
 
「ですが、もしお嬢様に何かあったら……」
 
 
 メイドが心配そうに言う。
 
 それもそのはず。
 俺とルクスは、疫病神として親戚の間で有名なのだ。
 生まれた家で火事が起きたというのがそもそもの発端なのだが、それ以降にたらいまわしにされた親戚の家でも、何らかのトラブルが起きた。……俺たちとは関係なく。
 でも、それらはすべて俺たちのせいにされた。
 俺たちといると悪いことが起きる。そういうイメージがあるらしい。
 
 
「何か、って何よ? あたしはルクスとアシールと話がしたいの!」
 
「で、ですが」
 
「ああもううるさいなー! ほら二人、こっち来てよ!」
 
 
 クラベルが俺たちの手を引いてどこかに引っ張っていく。
 おい馬鹿止めろ、腕が痛い。
 
 
「ふふん、あなたたちとは一度話がしたかったのよねー。
えっと、どっちがルクスでどっちがアシールだっけ」
 
「……」
 
「ちょっと、何か言ってよー。廊下じゃ他の人がいそうで話しづらいかしら?」
 
 
 クラベルがのんきに言う。
 ルクスはぷい、とクラベルから視線を外した。
 いままで他人にひどく当たられてきたせいで、ルクスは人見知りになっていた。
 
 
「じゃ、あたしの部屋いきましょうか。そこなら落ち着いて話せるわよね」
 
 
 なんで話を勝手に進めるんだ。
 しかし振り切るのも面倒で、しかたなく腕を引かれていくことにした。
 
 
「ルクス、隙を見て逃げ出すぞ」
 
「あ、あぅ……はい、です」
 
 
 小声でルクスに話しかける。ルクスはおろおろしながらもうなずいた。
 クラベルは気づいてないらしい。
 しばらく歩いて、クラベルは立ち止まりそこのドアを開けた。
 ちらりと中を見ると、桃色や白を基調とした部屋だった。
 
 
「はい、ここがあたしの部屋よ、どうぞどうぞ」
 
 
 クラベルに手を引かれ、部屋に入る。
 促されたので、仕方なくベッドの上に座った。
 ルクスは落ち着かず、そわそわと辺りを見回している。
 
 
「女の子の部屋なんて慣れないかしら? まあ気楽にして頂戴よ」
 
「……るせえ。話って何だよ」
 
「んー、ここの生活には慣れた?」
 
「胸糞悪い」
 
「ま、なんて言葉遣い」
 
 
 クラベルがはあ、とため息をつく。
 こちとらまともな会話なんてする気がない。とっとと部屋に返してほしい。
 どうせろくな目には遭わないんだから。
 
 ふとルクスを見ると、じっと部屋の隅にあるぬいぐるみを見つめていた。
 指をくわえ、うらやましそうに見ている。
 
 
「……はぅ」
 
「あれ、どうしたの? えーっと……」
 
「……そっちがルクスだよ」
 
「あ、そうなの? あなたたち本当にそっくりね……ルクス、なに見てるの?」
 
「ふえ、あ、あの……ぬいぐるみ、かわいいなって思ったのです……」
 
 
 ルクスは慌ててそう答える。
 クラベルはそれを聞くと、ぬいぐるみを部屋の隅からいくつか持ってきた。
 
 
「いっぱいあるから、ひとつ二つならあげるわよー。うさちゃんがいい? それともネコちゃんかなー?」
 
「う、ウサギがいいのです」
 
「おい、ルクス!」
 
 
 オレは苛立ちが募り、ルクスを怒鳴りつける。
 ルクスは肩を震わせ、縮こまった。
 
 
「……何のつもりだよ、あんたは。あんまり俺らに関わると、あんたがろくな目にあわねえぞ」
 
「ろくな目……あぁ、あなたたちが疫病神だって言われてることかしら?
それならあたし全然気にしてないわよ? 偶然が重なっただけでしょ。おじさまおばさまたちも非情な方よねえ、こんなかわいい子達にそんなこと言って、いじめて」
 
「……本当に俺らのせいだったらどうするんだよ」
 
「信じません。あたしはあなたたちと話したいだけだもの。アシールよね、あなたも強情ねえ」
 
「っ、さわんな!!」
 
 
 俺のほほをつついてきたので、その手を払いのける。
 他人にべたべた触られるのは好きじゃない、そもそもそんなことあまりされたことがない。
 せいぜい弟の手を引いたり、弟が引っ付いたりしてくるくらいだ。
 
 
「あ……ご、ごめんねアシール。驚かせちゃったわね。そりゃいきなり触られるのは嫌よね」
 
「……うるせえ」
 
「むっ……兄上をいじめないでほしいのですよ」
 
「あ、ルクスもそんな目で見ないでごめんなさいごめんなさい。仲良くしたいだけなんだけどな」
 
 
 だからってべたべた触ってくるやつがいるか、馬鹿。
 ルクスは片手でぬいぐるみを抱え、空いた手で俺の頭をなでてきた。
 
 
「なんで俺らと仲良くしようとするんだよ。気味悪く思ったりしねえのか?」
 
「思わないわよ。ルクスとアシールは普通の子でしょ?」
 
 
 クラベルはそう言って微笑んだ。
 俺はその言葉に驚いた。そんなこと、いわれたことがない。
 
 
「他の人がなんていったって、二人はなんも気にすることないのよ。
二人は二人らしくいればいいの!
……ところで、あたしのことお姉ちゃんって呼んでくれないかなー」
 
「……は、なんで」
 
「だって、弟なんて初めてだもの! お姉ちゃんって呼ばれるの、夢だし!」
 
「んむぅ……おねえ、ちゃん?」
 
「ルクス!」
 
 
 俺はルクスのほほを軽くつねる。
 こいつのことなんか無視すればいいんだ。今までだって、他人には関わるまいとしてきたんだから。
 クラベルはルクスの言葉を聞き、唐突にルクスに抱きついた。
 
 
「んもーっ、可愛いわねこの子!」
 
「はう!? く、苦しいのですよ……!」
 
「お、おい馬鹿止めろ!」
 
 
 クラベルに抱かれながら、ルクスは口を尖らせ戸惑っていた。
 俺はクラベルの腕を掴み、離させようとする。
 
 
「あれ、アシールもはぐされたかった?」
 
「違う! 馬鹿!!」
 
 
 誰がんなことされたいと思うか。
 ルクスはこれまでの経験のせいか、誰かに触られるのをひどく怖がるんだ。
 
 
「おい、ルクス。大丈夫か?」
 
「……だいじょうぶ、です。兄上、オレは平気なのです」
 
 
 ルクスの表情に、笑みが浮かぶ。
 そんな表情を見るのは、いつぶりだろうか。
 ずっと長い間、見た記憶がない。こんな安心しきった、笑顔。
 
 
「あ、あの、やっぱりおねえちゃんって言いにくいのです。あねうえと呼んでもいいですか?」
 
「全然オッケーよ! いいこねールクスは! ほーらアシールもお姉ちゃんとか呼んでくれていいのよ?」
 
「……誰が呼ぶか。あんたと仲良しごっこなんてする気もねえし」
 
「クールねえ」
 
「兄上は、意地っ張りなのです」
 
「ルクスてめえ変なこと言うんじゃねえ」
 
 
 クラベルのやつはニヤニヤとこちらを見ている。なんだその顔、気持ちわりい。
 でも、ルクスがこんなに心を開く相手というのは初めてのような気がする。
 こいつは信用してもいいのか? ルクスが信用する相手を。
 
 俺は、どうすればいいんだ?
 
 
「ね、アシールってば」
 
「うるせえ、ベル」
 
「あ、あたしのこと呼んでくれた!」
 
「呼んでねえし! 勘違いすんじゃねえ!」
 
「ルクスー、あなたのお兄ちゃん素直じゃないわねえ」
 
「む、んむぅ……」
 
 
 クラベルに話しかけられ、刻々とうなずくルクス。
 おい、肯定するんじゃねえ。
 
 ……まあ、仕方ない。
 この家にいる間くらいは、付き合ってやることにしよう。
 
 
「……るせえっつうの。あんたの勝手にしてろ、何があっても俺たちは責任おわねえぞ」
 
「あなたたちと仲良くするのがそんなに気に入らないのかしらね、アシールは。ふふん、いいわ、勝手にふたりと仲良くするわ。ねールクス♪」
 
「はぅ! あ、あねうえ~……」
 
 
 
 
 奇妙な馴れ合いはここから始まった。
 この経験が、俺たちを大きく変えるとはこのときは微塵も思わなかった。
 
 いまだに、これが正解だったのかすら分からない。
 
 
 
 
 
 
 


あとがき
 バンボロット双子の過去話。絵にしたらめっちゃ長くなるので小説で。
 クラベルとの出会い、そして旅に出るまでのお話です。
 他人に嫌われすぎて、軽く人間不信になった双子と、どうしても双子と仲良くなりたいクラベル。そんな3人のあれこれ。
 ショタを書くのはとても楽しいですが正直ショタを書いてる気にはなれませんでした。こいつら、ただのB双子だ。……このころからツンデレでした、Bアシール。
 次回、後編。


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